しにがみの。


したたかで容赦のないしにがみのお話。流血表現注意。

「あーこの鎌ね、刃がついてないの。変でしょ。なんで持ってるかというと死神には鎌、ってのが人間たちのステレオタイプらしいから、あたし達の正体がカンタンに分かるように上司に持たせられてるのね。ホントは邪魔くさいからこんなの置いて来たいんだけどねー」
いつものテンプレトークを話し終えると、目の前の男はあたしに対する警戒を緩めたらしい。ちょろいもんだ。


 根元の黒い色がすっかり目立った金髪を、再び赤黒く染めていく。体と生き別れた首が、しかしかすかに残る意識を振り絞って、信じられないという表情をあたしに向ける。
「とりあえず適当なことを言っとけば大体の人間は油断してくれるからねー。今回は運が悪かったと思って諦めなさい?」
再びテンプレトーク。果たしてこいつはどこまで聞けただろうか。


 あたしは生き別れの首と身体を再会させる。こいつはすぐさま起き上がり、しかし虚ろな目をしてどこかへ歩いていく。欲しいのは魂であって肉体はいらないから、これには車にひかれて死んだことにしてもらう。
 後片付けが終われば、今日の仕事は終わりだ。いつものように吸血鬼の娘に血を差し入れに行こう。まずいって不満たらたらだけど、今時うまい血を持ってるヤツなんて滅多にいないらしいからしょうがない。
 っと、終わった。明日はどこへ行こうかな。


 ・・・数分前の惨劇が嘘だったかのように、人気のない路地裏はまた元の静けさを取り戻し、代わりに大通りが騒々しくなる。人々は目の前で起こったかりそめの悲劇に気をとられ、ついに少女に気付くことはなかった。

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都合2度目の超短編。ダイアリーに移すのは始めて。
元々はこのリクエストから始まったものです。そこから「したたかで容赦ない娘」の像が浮かんできて。つい書きたくなってしまいました。


彼女の物語はもしかしたらまた書くかも。ネタはあるんだ、文才がないんだ。ついでに経験もないんだ。